公開日 2013年10月30日
更新日 2022年01月19日
【推薦】『優雅に踊ろう』中山嘉明
女踊りの一団、そこには滑らかな動きの中に優雅があり、一方で程よい強さも感じて、両立させています。作者はその立場に立ち、カメラアングルとカメラポジションを緻密に選択し、グッドシャッタータイミングで動きを捉えてあります。細かく言えば6人の踊り手に前と後ろの位置関係があり、立体的な描写になっています。また、フレミングも踊り手の主体であり、背景はうるさくならない範囲に収めてあります。
【特選】『進め笑顔で』横山宣明
迫力十分の無いようになっています。画面の作りを分解してみますと、それは二つの点の融合です。まず踊り手の動きの中から笑顔を中心にしたベストシーンを掴み取ったシャッタータイミング、次に踊り手を三角形構図にして動きに方向性を付けたことです。周囲の環境をカットしたフレミングも主体を強調しています。
【特選】『粋だね』 渡辺 邦昭
“粋” ~垢抜けしていて自然な色気を感じる~といったことですが、では作品のどういった点にそれをだすのか、かなり難しいことです。表情に?それもありでしょうが、この作品では一味変えて取り組んでいます。女踊りの行列で二人ずつ向き合ったある瞬間、体の線から発する艶めかしさに、はっとさせられます。表情が出ていないだけにいっそう強調されていると思います。
【三鷹阿波踊り振興会長賞】『やってきた道志連』 池口 保
三鷹阿波踊りが粛々と進んでいきます。先頭にはお色気+迫力の女性達の男踊り、後ろに続くは女踊り、さらに男の踊り手というつながりがあり、道志連の提灯を良いわき役にしてまとめてあります。
【三鷹商工会長賞】『にっこりと』北野 敏彦
しなやかに踊る美女にぐっと迫り、良い笑顔を含めたきめポーズを取り込んであります。ソロの踊り的な画面構成ですが、背景に対する目配りも十分です。二人の踊り手と提灯の組み合わせであり、適度なボケで主役を盛り上げています。また、この背景描写は、フラッシュ撮影の場合に生じる背後の調子の落ち込みもカバーしてあります。
【三鷹都市観光協会賞】『若い物には負けないぞ』鈴木 昇治
このお年寄り、外見からはかなりのご年配のように見受けられますが、
矍鑠として阿波踊りに関わり勇姿を見せています。作品の内容として、その場を記録すると言った面が強いのですが、主役の人物の存在感から見て正解でしょう。もちろん阿波踊り作品として決め手の良いポーズはしっかりとキャッチしてあります。
【入選】『ヤットサーッ』鈴木 一
阿波踊りが流れるように進んでいきます。直接的には遅いシャッター速度によって、美女踊り手の動きのあるポーズをとった物ですが、さらにカメラポジションを選んで列の後方まで入れた事もプラスされます。良い作品になる要素として、集団の中に構図面での主役踊り手を設定している事も書かせません。
【入選】『climax』木村 和美
男性の踊り手の中に、画面構成上の主役から脇役の関係をきっちりと設定してあります。それは、相手の行動から作者が的確なカメラポジションを確保して、グットシャッターチャンスを選んだということです。背景はちょっと雑然とした感じですが、見方を変えればその場のにぎやかさの描写に通じています。
【入選】『踊ラナ、ソン』土屋 サツ子
ちょっと面白い場に目を向けてあります。左右に位置した男性踊り手二人が先導的役割で、その後には女性踊り手の集団が進みます。阿波踊りの連は、先ず観衆に見せるという事がありますが、この一団からは踊りを目一杯楽しんでいるという雰囲気も感じられます。写真作画的には、踊り手にしぼったフレミングからくるものです。
〈総 評〉
平成25年は記録的な猛暑でした。
それをものともせず、三鷹阿波踊りにはたくさんの連が参加し、‘踊らにゃソンソン’の場となりました。一方それを撮るフォトグラファーも暑さ何のその、多くのシャッターが切られました。それは応募点数の大幅増加に現れています。でも、入賞者数は同じ、競争は激しくなり優秀作品9点が選ばれました。作品の対象は踊り手、フォトグラファーは受け手、両者の中から相手にいかに食い込んでいくかが決め手になります。
審査・講評 写真家 伊奈喜久雄氏